西天狗岳ピストン ~残雪の八ヶ岳に感じた雪山の世界~

西天狗岳山頂から

前回行こうか悩んだ八ヶ岳の天狗岳へ。 雪の後にしばらく晴天が続いており、当日も晴れ予報。これは深すぎない締まった雪が期待でき、トレースもあるだろうという考え。 雪山装備がまだチェーンアイゼンのみなので比較的容易と言われる天狗岳に行くことにした。雪山初心者向けとは言われるが自分に行けるものなのか?装備が足りないことは分かっているが現状でどこまで行けるのか?

自分にとっては小さな挑戦となった山行だった。



唐沢鉱泉まで

当初は唐沢鉱泉からの西天狗、東天狗、黒百合ヒュッテ経由の周回ルートを取る予定だった。しかし唐沢鉱泉へ向かう林道の途中で凍結により坂を登れない事態が発生。
しかもバックで戻ろうとしたところ操舵も全く効かず危うく崖に落ちるかとヒヤヒヤした。

凍結路面
FFスタッドレスでは無理だった

登山口を渋の湯へ変更することも考えたが、現在地から歩いて45分程度の位置にいたためそこから歩くことにする。往復で+1.5Hになるので周回を止めてピストンにすれば行けると考え出発。

林道


つらら
不思議なつらら
林道をしばらく歩くと唐沢鉱泉に到着。この時期は営業していないので、さっそく登り始める。

唐沢鉱泉登山口

唐沢鉱泉
立派な建屋


西天狗岳登山口
橋を渡って登山口へ

唐沢鉱泉~第一展望台

樹林帯を登り上げていく。予想通り雪は締まっておりトレースもしっかりついていたためザクザクと登ることが出来る。チェーンスパイクを装着していたが、樹林帯の登りは凍結個所もほぼなかったので無しでもいいくらいだ。
案外急な斜面

ぐにゃりと曲がっている。風で曲がった後にさらに伸びたのだろうか

綺麗にはがれていた

時折差し込む朝日が美しい


元々登山天気、SCW共に晴れ予報だったが高速から見えた八ヶ岳上空のみ雲がかかっていた。樹林帯ではやはり時折青空と太陽が覗くが曇り空感が否めない。
たまに粉雪もちらついている。


粉雪がちらつく

しばらくジグザグに登り上げると尾根に出る。分岐点になっているようだ。
もう一方の尾根にはトレースはなさそうだった。

尾根からは傾斜が緩やかになる。
しかし寝不足からなのか、雪面を歩く疲れからなのかいつもより疲れが早く来ている感じがある。緩い斜面を写真を撮ってだましだまし歩く。


青空が見えてきた

舞う雪と朝日
しばらく登っていくと少しずつ開ける感じがあり、樹氷も見られるようになってきて雰囲気が変わるのを肌で感じる。そろそろ展望が開けるのではと期待も膨らむ。

美しい世界。元々樹林帯は好きだけれど雪の樹林帯もとても良い

透き通る宝石のよう


ふと振り向くと中央アルプスが見えるではないか。
と思っていたら展望台に到着した。

赤岳はまだ雲がかかっている

あれは根石岳かな?

西天狗も左側にチラリと顔を覗かせる

南アルプス。左から北岳、甲斐駒、仙丈ケ岳

一休み

第一展望台~森林限界

第一展望台で元気をもらってさらに進んでいく。
ここからはトラバース⇒展望と続いて楽しめる。
雲が取れてきた

散歩気分で歩く
このあたりで登山者とすれ違うが道を譲ると見事に踏み抜いてハマる。
その方が抜けて自分も通ろうとすると同じくハマる。すれ違う時や追い抜く時に限って恥ずかしい思いをすることが多いのは気のせいだろうか。
しかし踏み抜くとかなり深いのだなと思った。

この辺りで踏み抜く

白い樹木に八ヶ岳ブルー

 第二展望台に近づくと天狗岳が見えてくる。
想像していたよりずっと険しそうだ。ここからさらにあれだけ登るのかと思う。

不思議な形の雪庇があった。
こちらも眺めが良い

雲がほぼ取れた。赤岳と阿弥陀岳の険しい山容が見える。

硫黄岳もこちらから見るとゆったりとした寛大な山容だ


第二展望台を抜けると森林限界にたどり着く。

森林限界~西天狗岳(核心部)


ここからが今回の核心部。チェーンアイゼンでは最も不安が残る部分だ。
幸いなことにトレースはしっかりとついているため、トレースを慎重に重ねながら歩く。
高度感がかなりある

傾斜もなかなかのもの



ハイマツが埋まっているところを見ると、下手にトレース以外を歩くと簡単に踏み抜くだろうことが想像出来る。
経験がないので分からないが、アイゼンのステッピングによる雪崩もあるというから踏み抜きで軽い雪崩が起きることもあるんだろうか、など想像する。

トレースと締まった雪質があるから登れるが、そうでなければ前爪のあるアイゼンがないと登れないだろう。その場合はここらで撤退となる。
この付近が風も最も強く、レインウェアをハードシェル代わりに着込んだ。
ザックを降ろすのもやりにくく、何か落とすリスクもある。
樹林帯を出る時点で着込めばよかったと少し後悔。



ある程度登ると傾斜が緩くなる。そこから少し登るとようやっと頂上に到着する。

西天狗岳山頂

山頂からは雲も取れて最高の眺めが待っていた。
白銀の、とまではいかないが今の自分には十分満足のいく雪山らしい眺め。
赤岳と阿弥陀岳。雪がある方が険しそうに見える

硫黄岳。火口跡が凛々しい。

東天狗。本当はあそこまで行く予定だったが

蓼科山も見える。
写真を撮っていただいた方が親切でチョコレートをくださった。ありがたや。
お返しするものがなく申し訳なかった。羊羹はあったのだが。。。

ザックを降ろして昼めしに入る。山頂は案外風が穏やかで良いコンディションなので調理することにした。
今回は以前作った焼きそばを作ってみる。無論、マルちゃんだ。
野菜は事前に切っておいた。
焼いてみるが玉ねぎに全然火が通らない。
しかし食べ始めてしまえばこっちのもの。旨い。





食事も終われば時間も押しており寒さもあるので長居は無用。下山に取り掛かる。

下山

核心部の下りは登りの倍は慎重に下る。
チェーンアイゼンでは当たり前だが爪が頼りなさすぎる。
横爪や後ろ爪があると安定するんだろうなと実感する。
とにかくトレースを外さないよう、滑らないように下る。



樹林帯まで下りれば後はほぼ心配がなく気楽に歩ける。
ほっと一息ついた。


展望台まで少し登り返す

第二展望台は少し崩れている

先日の編笠山と打って変わって膝の負担も少なく下りやすい
第一展望台まで下ってコーヒーブレイク。
タイガーのボトルに湯を入れているが、入れてから10時間程度経っているがそのままドリップ出来るほどの温かさを保っている。スリムだし便利だ。

後はとにかく下る。先日の編笠山はガチガチのアイスバーンでチェーンアイゼンでは歯が立たず非常に苦労したが、今回は程よい雪質で助けられてザクザクと歯が刺さって気持ちが良い。

あっという間に分岐点

サクサク歩く


もう少し
思ったより大分早く唐沢鉱泉にたどり着く。
後は林道を降りて終わりとなる。


林道歩き。溶けてべちょべちょである。

綺麗な青空。撮ってだしでも青く映るところが八ヶ岳ブルーと言われる所以か

帰り道から

振り返り

■チェーンアイゼンの限界

前回もアイスバーンで感じたが、やはりチェーンアイゼンの限界はこの辺りだなと感じた。残雪程度の雪量、程度の良い締まった雪質、ハッキリとしたトレース。これらの条件が重なっていればチェーンアイゼンでもある程度は行ける。
しかし赤岳クラスになれば当然無理だろうことが今回実感出来たし、今回の天狗岳でもトレースがなければ樹林帯ではワカンが、斜面が凍っていれば核心部ではアイゼンが必要になるだろう。
またアイゼンは12本爪が一番良さそうだとも思えた。

■トレース

良くラッセル泥棒なんて言葉もあるが、初心者にとってトレースほどありがたいものもない。やはり片道3時間以上かけて来ているので山頂まで行きたい。
もちろん体力、技術が伴ってくればラッセルもやりたいと思うが、現時点ではトレースをなぞらせてもらう方が安全に楽しめると思うのでありがたくトレースを辿らせていただく。

■雪山装備

来シーズンには12本爪アイゼン、ワカン、ピッケルは揃えなければダメだろう。
12本爪アイゼンはグリベルのものが良さそうだが実物を見に行こう。
下記サイトが非常に参考になる。


もちろん買うだけでは使いこなせないが、慣れるには雪山の場合相応の危険が伴うだろう。上記のように教室やガイドに教えを乞う必要もあるかもしれない。

服装に関してはミズノのブレスサーモ、マウンテンハードウェアのシャツ、モンベルのクラッグジャケットで行動中は快適だった。核心部は強風だったためレインウェアを合わせる。汗を極力かきにくいというとこれくらいが丁度良い気がするが、他の装備が必要かどうかは追って考えていこうと思う。

■レンズ

今回AF 35-70mm F2.8Dをメインに据えた。
既にオールドレンズの域に入る代物だが中々どうして良い写りをする。

  • APS-Cでは標準~中望遠のボケを得やすい焦点距離。
  • F2.8通しにも関わらず軽くコンパクト
  • 修理対応が終わっているため安価
  • ボディモーターなのでAF故障の心配がない
  • 簡易マクロ機能がついている
と良い点が光る。
登山中も樹林帯では非常に使いやすいと感じた。
古いレンズだがAPS-Cで使う分には開放では柔らかな表現を楽しめるし、絞れば解像感や色乗りも現代のレンズと遜色ない。線が細めな描写も好印象だ。

24-85mm F2.8-4Dがあれば1本で事足りるが、表現を楽しみたい時はこちらを持ち出すのもアリだなと思う。14-35くらいのレンズがあると良いが物色の旅は長く沼は深い。

また-10℃という環境だったが本レンズ、24mmF1.8G、AF-P 10-20mm、D500は全く問題なく動作していた。今回6時間程度の山行だったが電池交換も必要なかった。安価なレンズ、古いレンズでも信頼性があるのがNikonの良さだなと思う。

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