1泊2日 奥穂高〜ジャンダル厶〜西穂高縦走



 
 仕事、家庭、その他諸々の都合と天気がマッチする時は中々なく。
特に天候が不安定な夏。

しかし登山のハイシーズンは夏!

いやもちろん他の季節も素晴らしい事も知ってますが、高山植物は夏しか会えないんですよ。後はアクセスに必要なバスがハイシーズンしか早朝やってなかったり。

そんなこんなでここ3年ほど尽く計画は頓挫。家庭環境も変わってまた次に行けるのがいつになるか分からない。

それならここらで一度、登山に全リソースを降りきって自分を納得させようと思い、家族の理解を得て有休ぶち込んで行ってきました。

久しぶりの高気圧さんのおかげで日月が晴れそう。。。!チャンス!

山は逃げないといいますが、山は逃げなくても各人にとってのベストなチャンス、機会というものは簡単に逃げます。
長い目で見れば山小屋の存続や公共工事による景観の変化など山も変わらないわけではありません。

だからこそ、今が重要であって老後の楽しみなどと言ってられないのです。

さて、脱線しましたが今回は平日も活用しないととてもじゃないが行けない、大人気の北アルプス穂高連峰に行こうと決めました。

何故か。

最初はずっと前から考えてる北岳〜農鳥の白峰三山縦走をと思っていましたが、今年はなんと北岳山荘が改修でお休み!
テン泊装備で1泊2日で歩き通す自信がなく断念。

ではと北アルプスを調べ始めると。。。ありました1泊2日に好適なルートが。

興味はありつつも遠目に生暖かい目で見ていた西穂〜奥穂間の破線ルートです。

上高地入りして岳沢から奥穂高岳を目指して穂高山荘で1泊、翌朝早くから奥穂高岳から西穂高岳へ抜けて上高地へ下山するルートです。

岩稜の破線ルートかつ、一般登山道の中では国内最難関のルート。

天邪鬼な性格で、昔から定番を避ける傾向にありますがやはりここは一度は経験しないとならんだろうと思いました。

アクセス

実は上高地に行くこと自体、人生初でした。

人が多そうだし、バス乗車や駐車場に不安があったのです。
混み具合は運要素が強いですし、運要素をどこまで計画に入れるかですね。

と言っても今回は上高地を8時スタートで計画を立てたので、さすがに大丈夫でしょうと見込みました。

結果的には体力や睡眠時間を確保するために無理を言って前日泊させてもらえたので、ほおのき平で車中泊して4時前にあかんだな駐車場へ向かいました。

あかんだな駐車場は事前に調べた感じだと車中泊出来なさそうでしたが、いつの間にか24H出入り可能になったようで車中泊している人もいそうでした。

4:50が始発で、4時前には発着所に向かいましたが一番乗りでした。ザック置いておけばいいことを知らず結果的に2番でしたが。




4時を過ぎると職員の方が自動券売機があるセンターを開けてくれて、列に並ぶ人も増えてきました。
結果的に始発に並んだ人は全員乗れたんじゃないかと思います。
宿泊客が比較的少ないであろう日曜だからかもしれませんが、考えてみればそもそもこの時間帯はほぼ登山客だけで、遠方の都会の人は前泊しないと厳しいので4時〜5時の便は意外と穴場かもしれません。

そうでなくても乗りたい便の1時間くらい前から並べばなんとか乗れるのかな?と思います。

バスの中で石川、福井から来られた方と少し談笑して、上高地バスターミナルには5:20頃には到着です。

計画よりかなり早く出発出来たのでラッキーでした。

上高地バスターミナル〜岳沢小屋




バスターミナルから有名な橋を渡り、遊歩道を歩いて行くと岳沢登山口に着きます。

ここまでは一般客やカメラ客も見られましたが、ここからは登山道なので登山の人だけです。

樹林帯をテクテク登ります。
早い方にはバンバン先に行ってもらいます。

途中開けたところで明日通る予定の縦走路が綺麗に見えました。
この時歩いてた人はさぞ最高だったでしょう。。。うらやま。

この時点ではどのピークが何かよく分からず、居合わせた人とあれが西穂かなぁ?とかジャンはどれかなぁとか言い合ってました。

沢を渡ると岳沢小屋です。




岳沢小屋〜紀美子平

ここが思ってたよりハードでした。

岳沢小屋からまた沢を渡り、少し登ると、小屋の方?が行程の確認とヘルメット装着を促していました。

お勧めに従いヘルメット装着。
ついでに縦走路にあるピークについて聞くと、各ピークと気をつけるポイントを教えてくれました。ありがたや。

ただ私が見当違いな予測を最初に言ったので、少し面食らっていました。恥ずかしい。

そりゃピークも把握してないような奴があそこ歩くのか?って思いますよね。すんません。

そして印象的だったのが、SCWや各天気予報から明日も晴れそうですね、と言うと、いや、明日は雲りじゃないかなとその方は仰ってました。
SCWの精度は高いと思っていましたが、結果的にはその方の言うとおり2日目はガスでした。

天気図からなのか、雲などからの経験則、観天望気なのか。
聞いておけば良かったと後から思いました。

そこから少し進むとさっそく垂直なハシゴです。
その後も鎖場などの岩場が続き、中々に峻険な登りでした。






途中ガレ場になりますが、上部でまた岩場になります。
紀美子平に着いた時には中々の疲労度でした。

紀美子平は平と言うには狭いですが、展望も良くて休憩適地ではあります。
他の方に倣ってザックをデポして前穂高岳へ向かいます。





前穂高岳〜奥穂高岳

前穂高岳へはこれまた急峻な登り。
ここまでかなり岩場を登ってきているので、まだこんなに登るのか。。。!
というのが正直な声ですが登ります。



地図上だと紀美子平から近いですが、実際は標高差があるため中々登りますね。
山頂に着くと盟主の奥穂高岳の最高の展望が得られます。

阿弥陀岳から赤岳を眺めた時の感覚に似てる。スケールはより大きいけれど。

山頂は思ったよりも広く、風も穏やかだったのでザックを持ってきてここで休憩というのもアリでしょう。

槍や涸沢岳、常念山脈も見えます。
常念山脈は大天井岳が最も標高が高いですが、常念岳の方が盟主と呼んで差し支えない山容でした。小柄ながらも端正な三角形で、連なる山脈とはひときわ異なる趣があります。




景色を堪能したらピストンで戻ります。
紀美子平で少し休憩した後に奥穂高岳へ向かいます。

トラバースした後に山頂まで登っていきます。ここまで登って来ていれば技術的に困ることはありませんが、いかんせん体力が。

後から知りましたがこの岳沢ルートは標高差1700m。北アルプスでも笠新道などと並ぶ屈指の急登らしく、辛いわけだ。

もうかんべんして〜という頃にようやっと山頂に到着です。
奥穂高岳は山体は大きいですが、山頂はとても小さいです。






前穂高岳から見たときは晴れていましたが、ガスが上がってきていて嫌な予感ざありました。
ちんたら登っている間に案の定山頂ではガス。展望はありませんでした。

山頂から穂高山荘方面へ下ります。
最初は山頂直下にありがちなガレ場ですが、穂高山荘があるコルに近づくと急に切れ落ちてハシゴや岩場が出てきます。





この時、ちょうど前を歩いていた女性が山荘を目前に気が緩んだのか足を踏み外してしまって頭から転倒しました。
ヘルメットを装着していたおかげで怪我はなさそうでしたが、バランスを崩すと怖いですね。立ち上がるのを手助けして大丈夫そうだったので良かったです。

穂高岳山荘

奥穂高岳と涸沢岳の間のコルに建つ山荘で、どうやら人気の山荘らしく日曜にも関わらず続々と宿泊者がやってきます。

受付を済ませて2Fの相部屋へ。
1人分のスペースがキッチリ区切られていて、ギリギリ1人が寝られるスペースです。
狭すぎてベッドメイクに高度な技術が必要とされます。
しかし相布団じゃないのはいいですね。

有料ですが水筒へのお茶入れ300円(暖かい番茶かな?)や、売店ではない場所でセルフサービスで200円でコーヒーや紅茶があるもの良いです。
そしてスマホ充電も1回200円で可能という至れりつくせりっぷり。

日帰りメインであまり小屋に泊まりませんが、最近の小屋は皆さんこんな感じなのか、人気エリアの小屋だからなのか。

朝ごはんは早くても5時からだったので、朝ごはんと次の日のお昼用にお弁当を二つ夕飯後に受け取ります。内容は同じで名物らしい朴葉ずし弁当です。1200円ですがかなりギッチリつまっています。朝ごはん用は枕元に置いておきましたが、良い香りがずっとして食欲そそられて困りました。爆睡しましたけど。

早く到着出来たので、夕食は一番早い17時の回。
夕食までは外のテラスでのんびりします。早々に宴会してる人、本を読みふけっている人、日向ぼっこしてる人と様々です。

自分も昼飯がまだだったのでパスタを食べながらのんびりします。

夕食はごはんみそ汁おかわり自由。おかずもハンバーグとコロッケがメインでバランスよく量もあったのでビール一缶と共に平らげたらお腹いっぱいです。うまい。
ハンバーグは中々の硬度を誇り、割りばしが1回負けたので心して挑んだ方が良いですね。

食後はかなり冷えて来ました。
7月に小屋泊が実は初めてな気がするので経験値が足りなかったですが、想定以上の寒さ。
7月だし暑いくらいでしょと上のタイツもなし、フリースもなし、一応ダウンベストだけ持ってきていたんですが寒いのなんの。気温確認しとくの忘れた。

真夏シーズンでも北アルプスは夜の冷え対策は必須ですね。とりあえずレインウェア着てなんとか凌ぎます。ダウンベストも着てみましたが心持ち暖かいかな?くらい。やっぱり嵩張るけどフリースの方がいいな。

夕焼けは最初奥穂高側にちょっと登りましたが、サンダルだとあまり上までいきにくいのと、夕日の沈む位置の関係上奥穂高側に光が当たりそうだったので涸沢岳側にあるテントサイトに登ります。テントサイトにはヘリポートがあり、ちょうど良い展望地でした。
小屋の裏にもちょうどいい場所がありますが、そこは風が強かったです。
しかしヘリポートのすぐ隣にテント張ってあったけど、あれは緊急時にヘリが来た時どうするんだろうか。。。一瞬で飛ばされる気がするが。。。






夕焼けに各々シャッターを切っている中、ふと後ろの常念山脈側を見るとレンズ雲っぽい雲がいます。あまり知識がありませんが、レンズ雲は悪天の前兆か何かで良い予兆じゃなかった気がして、少し嫌な予感がしました。しかしSCWでは雲の量も多くないし、大丈夫でしょうと不安を振り払います。

寒くてあまり外にもいられないので、屋内で次の日の予定や天候を確認し、19:30頃には就寝します。ラッキーな事にいびきマンがいなかったので爆睡出来ました。

翌日3時前には起床。新月の時期だったのでもしかしたら星も撮れるかもと思い外に出ます。
見上げると満天の星空。。。ではなく満天の曇り空。
しかも厄介な事に上層雲ではなく、かなり分厚い雲が低い位置に広くかかっています。
常念岳や笠ヶ岳の姿が雲にかかって見えません。
ヘリポートで確認すると奥穂高山頂とジャンダルムは辛うじて雲がかかっていない。

1週間前に間ノ岳で1人亡くなり、昨日も天狗沢あたりで1人亡くなっている事が頭をよぎります。雨が降れば撤退を余儀なくされるでしょう。しかし中途半端なところまで進んでしまうと徹底すら難しい。
悩みましたが、少なくともジャンダルムまでなら行っても時間的にも撤退可能ですし、SCWの局地予報でも雨雲はなかったので雨は降らないと判断し、出立する事にします。

奥穂高岳~ジャンダルム

ヘッデンをつけて奥穂高岳へ登ります。
やっぱり登りはキツイですが、奥穂高岳からの縦走なので実はここが一番の登りで、奥穂高岳を通過すればここまでの登りはもうないだろうと言い聞かせながら登ります。
奥穂高岳山頂に着くと既にガスがかなり回ってきていて、ジャンダルム方面もジャンダルムは見えるがギリギリ。他は真っ白という感じです。

若干パラついたりして悩みましたが、とにかくジャンダルムまでは行ってみようと思いました。





ジャンダルムまでは距離的にはとても近く、奥穂高岳からの一つ目のピークなのですぐに着きますが、その間に個人的にはルート上最大の難所だと感じた馬の背(ナイフリッジかな?)があります。
両側切れ落ちていて、跨って通過したくなる細さから、さらにココカラウマノセと書いてある岩の所が恐怖でした。(これがナイフリッジか?)
一枚岩にかなり細いステップがあるだけ。
行った事ありませんが剱岳の蟹の横這い鎖無しバージョンをイメージしました。

岩は垂直ではなく多少傾斜している事と、距離としては短く一瞬ではありますが踏み外せばまず助かりません。最も緊張しました。重心バランスもとても重要だと思います。
テント泊装備の縦走者もいましたが、テント泊装備でここを通過する自信はまったくありません。

なんとか通過し、先に進みます。

その先にはコルを通過してロバの耳を少し巻きながら登ります。
ロバの耳も最初は鎖がありますが、巻いた後の折り返しから鎖がない直登があるためホールドを探りながら登って行きます。
ロバの耳を通過するとジャンダルムの肩へ到着します。

事前に調べていた通り、奥穂高側からは直登になりますが登れないことはなさそうだなと思いました。しかし今回は無理はしたくないので上高地側から巻いて西穂高側から登ります。

ジャンダルムへ登る道の直前に難所がありましたので慎重に通過しました。
1枚岩にハーケンが3-4個ほど打ち込まれていて、そこのみ足場にして通過します。ハーケンなかったらかなり厳しいですね。

西穂高側からは岩場登りではあるもののさして危険ではなく、ジャンダルムへ登頂出来ます。見た目通りそこそこの広さがあり、お馴染みの天使もいました。
ジャンダルムが縦走路の中で最も展望良いらしいですが、至極残念な事に全方位ガスで何も見えません。

しかしガスも比較的乾いた雲の中にいるようで、水蒸気で湿りはするものの岩が濡れるほどではありませんし、雨粒にもならなさそうです。

ここまでの岩場の雰囲気や到着時間を考えてもいけると判断し、西穂高に向かう事にします。


ジャンダルム~天狗のコル


ジャンダルムを通過した後は少し緊張が緩みます。
ここからは天狗のコルまでの長い下りになります。西穂高から来れば長い登り。
危険個所はあまりないので装備を整えたり一息つくならここが良いでしょう。

私は登りはしんどいので苦手ですが、下りは体力使わなくていい分足さばきに集中出来るのでいくぶん気持ちが楽です。
西穂高側から来た場合はここで疲れた後にロバの耳や馬の背の難所があるため逆に自分にとっては危険な気がします。

天狗の頭~間ノ岳~西穂高岳

この縦走路、以前歩いた中央アルプスの縦走路と比べて距離がかなり短いため次々にピークが表れますが、一つ一つのピークとコルの傾斜が凄く、コルに立つたびに聳え立つピークを見上げるという構図になります。





天狗の頭と間ノ岳はどちらもほぼ垂直な登りを登り上げます。
直近の死亡事故が起きたのも天狗のコルと間ノ岳なので慎重に行きますが、馬の背などと比べると特に緊張はなく通過します。大変ではあります。

天狗の頭を超えると急に岩が変わり、赤茶けた平たい岩が増え、浮いていて不安定な足場になってきます。

また天狗の頭を少し過ぎた小ピークをどちらに巻くのか判断が難しい個所がありました。
小ピークや聳える岩稜を左に行くのか?右に行くのか?の正解を見つけるのが難しいですね。登りの時にはあまりそういう間違いはないのですが、下りになるとこれが難しくなります。特にガスっており数十m先が見えないので余計です。

この選択を間違えると急に下りにくくなり、ルートを戻ろうと思うと樹林帯と違って滑落の危険度も高まります。

奥穂高側から向かうのはどちらかと言えばマイナーなので、マーキングも見つけづらいです。

一度間違えた方向に降りてしまい、途中でやはり違うと判断して岩稜を反対側に越えようとしましたが中々に危険でした。
破線ルート上の遭難や滑落はこういうルートから外れてしまい、より危険な地帯に踏み込んでしまった時に起きるのかもしれません。

この時はやはり岩稜の反対側が正解でした。
こういう所はGPSで地図を見ても、岩稜の右が正解か左が正解かというところまでは分かりにくいものです。上から見て、少し進んでみてあっているのか、違うのかという疑念の目を常に持ちながら進み、違うと感じたら変更する事を躊躇しない感覚を養う事が必要かと思いました。

間ノ岳のコルに近づいてくると有名な逆層スラブがありました。
雑誌などを読み込んでここについては予備知識はありましたが、ちょっと拍子抜けです。





濡れていなければ特に問題になるような地点ではないと感じました。
広いし傾斜も垂直というわけでもなく、短いので普通に登り降り出来ます。
ただし鎖があるから、というのはあるかもしれません。

靴のグリップでもそこそこいける感じでしたが、鎖はあった方が便利だなと思いましたので鎖がなかったときは正に難所だったのかもしれません。

間ノ岳への登りは天狗の頭への登りと同じようにとにかく垂直に登り上げます。
間ノ岳の山頂は登頂できたのか?よく分かりませんでしたが岩に間ノ岳と書いてあるのは見かけました。

間ノ岳からの下りは例の赤い平岩が積み重なったガレ場。
かなり不安定で、さらにこのガレ場の急な谷を下っていくのでここは危険地帯だと思います。




今回平日で下りという事もあり幸い人がいなかったので落石もそこまで気にせず行けましたが、これが混んでいて登りだったらと思うと中々に恐怖ですね。

どこまで事実か分かりませんが、途中ですれ違った方が先日の間ノ岳の遭難はおそらくこの個所での落石が原因という事でした。

また途中から左側に逸れて谷を離れるのですが、こちらも下りで行くとマーキングを見つけにくく、よく地形を観察する必要があります。これも晴れていれば難なくといったところな気がしますが、ガスの時は気づかずに下っていってしまうととても危険ですね。

この先は相変わらず垂直な岩場はあるものの、難所というほどの場所はない気がします。

岩場を淡々とこなしていくと西穂高山頂へ到着です。

ここで数人の方がいらっしゃったので少しお話しましたが、おひとり軽装な方がまさかの奥穂高から来ていて、(途中抜かれました)西穂高からさらにピストンでこれから奥穂高に戻り、余裕あれば北穂高まで行くとの事。

ここまでずっとガスガスでさすがに展望ゼロで飽き飽きしてきていたのですが、こんな超人もいるのかとびっくりして、こんなガスでも楽しそうに歩いていく姿を見て少し元気をもらいました。どんな状況でも楽しめるという姿勢は本当に大事だなと思います。

西穂高岳~西穂山荘

本当に危険地帯と感じるのは西穂高までで、西穂高から先は明らかに難易度が下がります。
ピラミッドピーク、チャンピオンピーク、西穂独標までサクサクとこなしていきます。
西穂高までと西穂高から先は明らかにすれ違う登山者も違いますね。

独標まで来るともう随分平和な感じです。
以前独標に西穂山荘側から初めて登った時はチャレンジングな登りだなと思いましたが、この岩稜帯を越えて来た後ではこんなに簡単だったか?と思いながら下りました。不思議なものです。







独標から降りると後はもう普通の登山道です。
意外と山荘まで距離がありますが、淡々と降りていきます。
ここは本当は焼岳と乗鞍と笠ヶ岳の絶景が見られる素晴らしい稜線ですが、ガスなのは残念です。

丸山を過ぎたあたりでストックでようやっと降りているおじいさんに出会いました。息子さんらしき方が後ろについておりています。
その状態でもここに来ているという事自体、相当な山好きな方だろうと思いつい頑張ってくださいと声をかけました。

すると少し穂高山荘の事や今回の縦走路の事をお話してくれました。
昔はやはり鎖やハーケンもなく、もっと難易度が高かったようで随分簡単になったと仰っていました。私としてはそのおかげで自分のようなレベルの人間でも縦走路を歩く事が出来るわけですからありがたいですが、やはり自らが憧れ、挑戦した山が簡単になり、凡庸になっていくというのは一抹の寂しさがあるのではないかと察しました。

しかし穂高山荘から来たことを伝えると、

弁当は今も朴葉すしかと聞かれ

そうです美味しいですと答えると

あれは美味いよなぁ、酢が良く効いていて、と

おそらく御年80は超えているんじゃないかと思いましたが、30代の自分とこんなにも世代が離れているのに山荘の弁当の朴葉すしというピースで共感できるという事がとても素晴らしくて愛おしい事だと思いました。
そんな朴葉すしを続けている穂高山荘は既に歴史となりつつあるのでしょう。

先もあるのでお話もそこそこに別れを告げてまた下り始めます。
山荘まで一気に降りて、山荘で先の朴葉すしを平らげます。

天ぷらとよく煮つめた小魚もついててうまいんだこれが。

西穂山荘はロープウェイ客で賑わっていました。

実は新穂高からも平湯まではバスが出ていると途中で知り、それなら新穂高にロープウェイで下って楽できるじゃん!と思ったんですが既に上高地までの往復で乗車券を購入済みなのと、平湯からあかんだなまで30分ほど登り返さなければいけない事を考えるとちょっと下る時間が長くても気力のあるうちに歩いた方がいいだろうと、予定通り西穂山荘から直接上高地に下ります。



西穂山荘~あかんだな駐車場

西穂山荘から上高地に降りる道はロープウェイがある今、マイナーで荒廃しているかなと警戒していましたが、案外上高地から登る人もいるのかとてもよく整備された道でした。
そのおかげで急な下りでも足を痛めずにサクサクと下れます。
途中学生さんらしき団体もいたので、学生登山にも使われているんですかね。



1.5時間ほど淡々と樹林帯を下り続けると上高地の登山口に到着。
梓川沿いをしばらく歩くとバスターミナルに到着です。

下から見上げると霞沢岳も穂高も同じくらい大きく聳えています。実際には穂高の方が全然大きいですが。
でも霞沢岳もカッコイイからいつか登りたいなぁ。。。

平湯行のバスは毎時0分と30分発。
ちょっと休憩がてら1本後の便に乗る事にしてお土産や写真展などぶらぶら見て、バスに乗り駐車場まで揺られて山行終了です。

所感

穂高の地形

穂高山荘で感じましたが、これだけ近い距離に奥穂高岳と涸沢岳が聳え立っているのは降雪が豊富な北アルプスならではでしょう。しかし同じ北アルプスでも後立山連峰の山々とはまた異なります。穂高付近だけではないでしょうか。

この地形は何から生み出されたものなのか。同じ降雪量が豊富な北アルプスの他の山域と何が違うのか、そのうち調べてみたいですね。

小屋泊時の装備

今回岩稜帯を抜けるにあたって、小屋泊を利用して30Lの軽量ザックで挑もうと思いました。

そこで装備は比較的厳選したつもりでしたが、結果的には小屋の多さや販売などの充実装備っぷりからバーナーとコッヘルは不要だったんじゃないかと感じました。

常に遭難時でも少なくとも1日は耐えられるようにとバーナーなど持って行っていましたが、それにしたって今のガスとコッヘルは初期に購入した汎用的なものでコンパクトとは言い難く、緊急用で通常利用を前提としないならもっと小さいもの、もしくは無しでもいいかもなと思いました。

というのも中々の標高差がある岳沢ルートで登ったことで30Lザックでも後半重さを感じたからです。

用心から色々詰めてしまいがちですが、本来不要なものは入れずに軽くできればより軽快に歩けてコースタイムの短縮に寄与し、結果として早着出来て安全でもあります。

トレランじゃないので極限の軽量化とかは考えませんが、少なくとも小屋の設備や販売はもっと積極的に利用することを計画に組み込んだほうがいいなと感じた次第です。

登山靴

先日購入したアルパインクルーザー2000を少し履き慣らして早速履いていきました。

核心部が岩稜帯なので、ギリギリまでシャンクが硬いリベレライトHDと悩みましたが、濡れた岩の対応力を考えてアルパインクルーザーにしました。

結果としては正解だったように思います。

濡れた岩の上でも不安になるようなグリップ抜けがなく、憂慮していた縦走路の岩稜帯でも安定したグリップを見せつけました。


一定程度の斜度の岩であれば靴のグリップで立てますし、シャンクは柔らかいですが意外と小さなホールドで立つこともそこまで違和感ありませんでした。

また縦走路ですれ違った方の靴を見ても、スポルティバはもちろん多いですが案外モンベルの人もいて、一部他メーカーという感じでした。

またローカットシューズの人も多く見かけました。
バスでお話した縦走路は3回ほど経験があると仰っていた女性の方も、スポルティバのローカットで50L程度のザックでした。

ローカットでは自由度は高いものの、高山や重量のある装備では役不足であろうと考えていましたが、案外そんなこともないのかもしれません。

何より岩稜帯でソールのグリップを活かす事も多く、その場合は硬いライトアルパインブーツよりシャンクが柔らかい方がより柔軟に岩肌にソールを貼り付けてグリップさせやすいのかなと思いました。

もちろんアイゼンが必要な場合は蹴り込むために硬度が必要なので、柔らかいローカットモデルというわけにはいきませんが、岩稜帯でローカットというのは意外とアリなのかもしれません。

足首の保護がないので捻った時のリスクはありますが。

ただ柔らかくグリップするのはいいんですが、その分足の裏が痛くなりました。マメも出来ました。

グリップとのトレードオフだと思いますが、足の裏の皮を厚くするしかないですかね。

後はアッパーも比較的柔らかいためか、当たると痛いところはあるものの時々によって当たる場所が変わったり、脱げばもう気にならないレベルだったりしました。紐の締め付け具合で当たり方変わるんですよね。
アッパーが硬いライトアルパインブーツではそういう事はなかったんですが。

足型のフィットという点でいくとリベレライトHDやサレワの方がいいですが、樹林帯や岩稜帯も含めた総合力ではモンベルといったところでしょうか。

またより慣れてきたら印象も変わってくることでしょう。

天気

SCWでは日月と同じような薄めの雲の状態。
今までの経験上、これくらいなら比較的晴れ間を拝めるという認識だったので行きましたが、結果は日曜は最高の天気だったものの月曜はずっとガス。他の地域は結構晴れていたようで、高山はガスでした。なんとも予測しにくい。

ただ日曜の夕方レンズ雲が出ていました。
調べたところレンズ雲は上空域で強風が吹いていると出来る雲らしく、その後風が強くなったり荒天になる予兆だそう。

そう考えると雨にならなかっただけマシと言えましょう。
ただ夏の天気はどうやっても正確な予測は難しいんだなと実感しました。

そうなるとお金を払っている意味があまりない気がしてきたので、無料の天気予報だけでやるのがいいのかな。

ただ岳沢小屋付近であった小屋の方?は翌日の曇りを認識していらっしゃいました。
因みに穂高山荘で掲示されていた予報は晴れでした。

もしかすると天気図を読む技術があればその予測が出来たのか、その日の空の様子からその方の経験上曇りだと思ったのか。
天気図を読む技術は難しそうなので手を付けてこなかったのですが、手をつけてみようかな。

お腹の調子

今回前穂高から紀美子平に戻ってきて軽く補給した後に、水筒の冷たいお茶に切り替えてガブ飲みしたところお腹が冷えたのか急に催してきました。
元々お腹が強くなく、肉の脂やカフェインで下しやすい体質です。

ストッパを持っていたのでなんとか穂高山荘まで持ちましたが、岩稜ばかりだと隠れる場所すらなく、気が気じゃありませんでした。

翌日の縦走路ではそんな事言ってられないですし、とにかく冷たいものを避けてビオフェルミン飲んで、出来るだけトイレをしてから縦走に臨んだところ大丈夫でした。

今までも何度かヤバイことがあったので、私の山の最大の敵は自分のお腹かもしれません。

人とのコミュニケーションについて

登る途中で出会う人

バスで出会う方や登る途中で出会う方、いると思います。
特に足の速さが似ていると、何度か重なる時があるのでちょっと連帯感みたいなものが生まれますね。だけど山荘に着くとちょっと声をかけられないのは自分の恥ずかしさから来るもので、話したいと思いつつも勇気を出せないのがなんともなぁというところです。

山荘で出会う人

山荘でゆっくりしている時に、たまたまガイド?プロ?のような方が常念の方にいる奥さんと電話をしている風でした。なんとロマンチックなこともあるなと思ったり。
また奥穂の山頂で写真を撮った海外の方は奥さんにここに登ると約束したんだと言っていて、山荘ではずっと本を読んでいました。下は半ズボンでw寒くないのかw

山荘でももうちょっと自分からソロの方に話かけられればもうちょっと山荘にいる時間を楽しめるんだろうなぁと思いつつ、あまり勇気が出ずつい雑誌に逃げてしまいます。それも悪くないんですけどね。

だけど人見知りなくせにおしゃべり好きなので。

縦走で出会う人

ジャンダルムに向かう際にガイドの方がお客さんをビレイしていました。
最初は私もビビっていてガイドさんの後ろなら多少安心だと甘えた気持ちがありました。

しかしやはり馬の糞のように後ろにいるのが迷惑だったのか、嫌そうな顔で先に行ってくださいと言われたのが印象的でした。

その後は自分の実力で踏破出来そうな事が分かったので特に問題はありませんでした。

やはり自分が弱気な顔をしているのと、自信がある顔をしているのは見ればすぐに分かるのでしょう。途中途中で出会ったガイドさんはにこやかにお互い通過していきました。

国内最難関の縦走路ですが、思ったより中央アルプスを縦走した時に出会った人たちとあまり雰囲気が変わらないなぁと思いました。もっとガチガチのクライマーみたいな人ばっかりかと思っていました。

トレランぽい方や中高年の方、写真や動画を撮りたいソロの方と様々です。

でも縦走路で出会ってお互い励ますように声を掛け合うのも、またいいものだなと思います。

あと今回学んだことは、山で声をかける時の一番便利なフレーズは

「どちらからですか?」

ですかね。来た地域、ルート、どこまで行くのか。それだけでもちょっとした話題です。
なんて普通にコミュニケーション取れる方は文字にするまでもない当たり前のことでしょうね。だけど自分のような人間にとっては新しい発見なのでした。


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