日帰り:初の厳冬期八ヶ岳に挑戦するも、あえなく撤退(硫黄岳、根石岳)


八ヶ岳に雪がこんもり積もってそうなので、有休で八ヶ岳へ。

しかし今は1月、言うなれば厳冬期です。
残雪期ならまだしも、厳冬期の八ヶ岳に足を踏み入れていいのか?
と思いつつも計画。
本当は南アルプスの天気が良かったので七面山に行こうかギリギリまで迷いましたが、(八ヶ岳は曇り、七面山は晴れ)厳冬期の経験もしてみたいと思い八ヶ岳へ。

夏には何度も行ってますが、今の自分で赤岳など行けるはずもなく。じゃあどこなら行けるの?北横岳?蓼科山?

でももしかしたら雪化粧した赤岳を見れるかもしれない。
てことで夏沢鉱泉から入山し、硫黄岳と根石岳を周回する計画で。




アプローチ

昨年はバレーノで唐沢鉱泉に行こうと思ったらスタックして登れず、林道をかなり歩くはめになった。
しかし今年はジムニーというさいきょうの相棒がいる。
このために買ったようなもんだ。


案の定八ヶ岳のデコボコの轍も物ともせず、凍っているところでスタックしかけたが、4WDモードにすると難無くクリア。正直、すごい。
FRモードでも結構イケるのも凄いですが。

おかげで桜平駐車場(上)に駐車出来たので最短のアプローチを取れました。

桜平ゲート〜夏沢鉱泉





ここは車が通る区間なので、林道歩きです。
意外に登るし車の轍で凍っているところもあるため、最初からチェーンスパイクは使いました。

最初から今まで来た八ヶ岳とは雪の量が雲泥の差です。木にこんもり。山肌が白い。
これよこれ。こういうんが見たかったんです。













30分ほど登ると夏沢鉱泉に着きます。
見るとハイエースにチェーン履かせて置いてあります。4WDにチェーンとある程度の最低地上高があればわりと行けるもんなんですかね。






夏沢鉱泉〜オーレン小屋

ここからは普通の山道です。樹林帯でなだらかな道。上部の雲は取れないですが、雪まみれの景色を愛でつつ登ります。
トレースもハッキリしておりそこそこ踏まれているので、サクサク行けるかと思いきや、やはり夏道の様には行きませんね。








オーレン小屋は水力発電を行って電力を賄っているみたいです。
自然の力をうまく利用しているんですね。






埋もれてる・・・








オーレン小屋は営業終了していましたが、冬季小屋が開放されていました。
膝以上の雪なので窓から入ってみます。

綺麗な冬季小屋でしたが、張り紙がたくさんしてありました。
後で会った人に聞きましたが、一部マナーの悪い方がいたそうで、冬季小屋存続の危機にもあるみたいです。

禁煙、アイゼン脱いで、は普通のマナーとして分かります。
そんな事する人いるの?って注意書きもありましたが、実際いたみたいです。

ただどの注意書きも厳しい言葉ながら、最後には無事下山してください、と言った事も書かれていて山小屋の方々の人柄の良さが垣間見えます。

見学は早々に、外でチェーンスパイクからアイゼンに履き替え、オーバーグローブなど準備して上に向かいます。





オーレン小屋〜夏沢峠

こちらもトレースは明確で登りやすいです。
というか最初根石岳に先に行く予定だったのですが、トレースを歩いたら夏沢峠に続く道でした。トレースを信じて道間違いとは良くないですね。


引き返すには微妙なところまで来てしまったので、このまま登って先に硫黄岳に行く事にします。SCWの予報では9時頃が一番雲が晴れそうだったので、9-10時くらいで硫黄岳山頂にいれば赤岳を見れないかなという魂胆です。

今までとあまり変わらず樹林帯が続きます。
八ヶ岳は裾野がのびのびと広がっているため、緩やかな樹林帯が長いです。

オーレン小屋までは手袋無しできており、オーレン小屋からインナーとオーバーグローブを着けましたが、最初寒くて寒くてずっとグッパ
してました。
気温は-20℃なので、一旦行動を止めると、ものすごく身体が冷えますね。

秋や残雪期の比じゃありません。

一応ピッケルも持ちましたが、夏沢峠までは必要ありませんでした。10本爪以上のアイゼン、ピッケルが必要なのは夏沢峠以降ですね。




夏沢峠〜硫黄岳(撤退)

夏沢峠に着き、ここがあの加藤文太郎が厳冬期デビューした夏沢峠かー。と感慨に浸りつつ、硫黄岳に向かいます。





夏沢峠からはまだ少し樹林帯ですが、少し雰囲気が変わります。より白い感じ。





樹林帯を抜けるといよいよ森林限界に取りつきます。



が、しかし。



なんすかこの風。え?
いや頭では分かってたつもりでしたが、厳冬期の気温に強風が重なるとこんなにヤバイもんかと。気力体力根こそぎ持ってかれてる気分です。






夏沢峠で何か補給すれば良かったんですが、既に後の祭りです。
しかも雪で埋まっていて夏道が全然分かりません。夏にこちらから来た事が無いのも失敗でした。

とりあえず登れるルートで登って行きますが、吹きっさらしから逃れる術もなく、岩影でどうにかこうにか羊羹をほうばります。
しかし体力は奪われる一方です。

岩を抜けて上を見ましたが、硫黄岳の山体が大きいためかどこが山頂か検討がつかず、下手すると爆裂火口に落ちるかもしれないという恐怖もあります。
YAMAPで現在地や方角から地形を認識しようかとと思いましたが、ロック解除するためにグローブを外すどころではなく。

とかなんとかいろいろな事が頭をよぎっていき、結論。




あ、これ無理だわ。




となりました。
夏の経験、小学生でも登る山、コースタイムなどから完全に硫黄岳を甘く見ていました。
悪天候時にここまで様変わりするとは。

岩陰に避難するも風からは逃れられない

ここで撤退を決意

ホワイトアウトまではいかないけれど視界は良くない

この状態で半ば凍っているのに動くD750っていったい・・・



そうと決まれば下ります。
幸いガリガリに凍っているわけではないため、ひたすら下り樹林帯に退避します。








樹林帯に降りると先ほどまでの強風が嘘の様な
静けさ。
山頂まで後30分程度だったのですが、撤退となりました。逃げるは恥だが役に立つ、と自分に言い聞かせておきます。

撤退直後はもうすぐ帰って息子と戯れたいと思っていたのですが、落ち着いてくると時間がまだかなりあることに気づきます。
オーレン小屋の近くまで下りて来ていましたが、地図を見ると根石岳ならほとんど樹林帯の登りで行けそうじゃないか、と思い根石岳に向かう事にします。コースタイムに少し余裕を見てもなんとか下山予定には間に合いそうです。






根石方面に向かう道はトレース無し

オーレン小屋〜箕冠山

根石岳に向かう道に入るとなんとトレースがない。まっさら。
時間の許す限り行ってみようと思い、進みます。ツボ足で。

しかし、まぁ、これが。
雪の深さが尋常じゃないです。(自分の経験比)
しかも新雪でフワフワしてるから沈む沈む。
あっという間に体力を奪われ、乳酸が溜まっていきます。

そういえば昔乳酸のことを乳酸菌と勘違いしており、乳酸菌溜まるわー、などと曰っていました。どうでもいい。




すると後ろから人が。
どうやら小屋の方のようで、歩荷されています。キャベツ。

お若い方のようでした。

自分がハァハァしていたので、先に行ってくれました。見るとスノーシューで軽快に登って行きます。

え、何あれチートじゃね?なんてことは思いません。

やはり浮力があるからか、ほとんどズボってません。トレースをつけてくれてありがたやと思いつつ後を追うとこちらは浮力がないからかまだズボります。何もないよりずっといいんですが。

ラッセルで山頂まで行けば達成感が!とか甘い事を考えていましたが、現実はそう甘くありません。

目の前でトレースつけてもらって追うしかない恥ずかしさと、それでもとんでもなくキツい事にもうなんだかワケがわからなくなってきます。



しかしここでまた撤退したら何かがアカン気がして、死にそうになりながら気合と根性で進みます。山食でバリバリラッセルしてたお父さんがいましたが、あんなカッコよくなれませんでした。でもせめて山頂までは。


一瞬の青空




なんとか登り、漸く山頂に着いていよっしゃー!となったけど展望がない。
あれ?根石岳からは硫黄岳が見えるはずじゃ?

と思い標識を確認すると、なんと登りあげたのは箕冠山(みかぶりやま)で、根石岳はさらに下って登り返した先でした。


根石は。。。まだ先かいっ

もう無理っす



時間、体力、気力が切れて、根石岳まで行ってませんが山頂を踏んだので良しとします。
自分なりに全力は尽くした。
しかし計画の甘さがひどい。

下山

そこからはとにかく来た道を下っていき、オーレン小屋に戻ります。
そこでようやっと昼飯をとる事が出来ました。
ホッと一息。








豚骨ラーメンと焼肉うまい。
白飯が欲しい。

食べ終わった頃に家族連れの方が入ってきて、張り紙の由来やら教えてくれた。
埼玉から電車で来られたとのことだが、駅からはタクシーなんだろうか。
時間は自由にならないが、無理のない日程を組めるのと縦走しやすいのはいいなと思います。

ただ公共交通機関を活用出来るのはあくまで都会だから。静岡からでは電車もバスもお山に行くものはない。なかったと思う。多分。

腹ごしらえを済ましたら後は帰るだけだなーと思ってましたが、昼飯休憩で身体が冷え切ったのか手の小指薬指や足の指が痺れており、ちょっと痛みも出てきた。
例の如くグッパしつつ下っていく。

やはり踏み固められているところの下りはとても早く、わりとすぐに夏沢鉱泉まで降りてこれた。




夏沢鉱泉で暖かいものでも、と思いお邪魔する。小屋の方と少しお話出来たので登山道の様子や撤退した事をストーブにあたりながら話した。

小屋の方によると

1ー3月はだいたい風速15m以上が普通。
25mとかもある。
オーレン小屋より上は吹き溜りだから降ると積もる。
普段はスノーシューでふみふみしたい人達がトレースつける。

などなどいろいろ面白かったです。
疲れてる様子が出てたのかいろいろ気を使ってくださいました。
小屋のお兄さんありがとう。
疲れ切った時の優しさって本当に身に染みる。
いつか自分も誰かに優しく出来るだろうか。

小屋でストーブとココアであったまったらかなり回復して来たので、残りを下ります。
因みに帰り際に小屋でスノーシューレンタルを2000円からやってる事に気づき、借りればよかった!と思いましたが今更ですね。

来た時はあまり思いませんでしたが、意外と斜度が急&車も通ってるので所々凍ってました。
スパイク着けてれば問題ないですね。

この辺りにきて空が晴れてきました。
まじかぁーって感じですが仕方ないですね。
夏は朝早い方が雲に巻かれないんですが、冬は違うのかな。

下りきってゲートを超えたら終了です。
さ、帰ろ。


ここにきて青空




帰り道で。白いわー

横岳


甲斐駒が神々しい


所感

ラッセル

何故小屋の方々はあんなにサクサク登って行けたのか。
一つは

スノーシューによる浮力

です。明らかに。
スノーシューでふみふみしたところも、自分がつぼ足で乗るとズボっといきます。
スノーシューはデカいし重いので悩ましいところですが、スノーシューかワカンがないと太刀打ち出来ないと実感しました。

一つは

重量

です。当たり前かもですが。
先頭の方が小柄な若い女性でしたが、一番サクサク登っていました。荷物は他の方と同様に見えました。女性の方が軽々進んで行った後を若い男性の方が登って行こうとした所ハマっています。

総重量の差であんなに違うんだなぁと思いました。

後は私自身にラッセルする体力、筋力がないですね。あの人たちは日頃から山で生活していれば毎日がトレーニングのようなものだと想像します。それに比べて普段中々運動しない私はひたすらに体力を使うラッセルに打ちひしがれるのでしょう。

カメラ

D750
Ai 28-50mm F3.5
AF-S 50mm f1.8
AF-S 18-35mm f3.5-4.5

で臨みました。
結果は-20℃でもなんなく動作する。
森林限界上の強風下ではやや各所が凍り始めていましたが、それでもシャッター切れるし後から不具合も出ていない。
しかもD750電池持ちがD500より全然良く、余裕。

Nikon凄いなと素直に思いました。
もちろんPENTAXやOLYMPUSも同じかそれ以上に過酷な状況でも動くかもしれません。
ただ自分はNikonのカメラが好きで、フィーリングも合うなぁと思ってます。デザイン然り、操作性然り、システム然り。

そんな好きなカメラが信頼出来る物だと実感出来た時、より愛着が増すのは当たり前ですね。

撤退

後からはなんとでも言えるしなんとでも思えます。

しかしあの時にはそれ以上進もうと思えなかったのです。

撤退の要因としては

・エネルギーが不足していた

コースタイムから甘くみており、夏沢峠で何も補給しませんでした。
そのためか普段ならキツかろうが登るんですが、今回は冷静な判断、思考が出来なくなっていたように思います。

しかし補給しようにもすぐに取り出せる羊羹やチョコは凍っている。(羊羹はかろうじて食べられた)雨蓋に入れたおにぎりを食べたいが風の強さで取り出すどころではない。

-20℃の強風の中でも食べやすく、エネルギー補給出来る食べ物を考える必要が出てきました。さぁどうしよう。

・想定以上の強風

1日曇り、日本海側は冬型の気圧配置という条件はあったものの、南や平地は晴れだし、穏やかな曇りかなと思っていました。

樹林帯はその通りでしたが、森林限界上は一変。吹雪混じりのとんでもない強風。
自分が滞在していた間は全く止むことなく。

サーマラップも中に着込み、バラクラバも着けていましたがみるみる体温を奪われる。
明らかに装備不足です。

しかし後から考えれば本などで見かける立っていられない、吹き飛ばされるというほどではなかった。ということはまだ上があるということ。

・硫黄岳の地形

某としてあまりに広い地形なため、どこを通れば足場があるのかが全く分からない。
視界も悪い中、一歩間違えれば火口に落ちる可能性だってある。

夏の間に北側からの硫黄岳を経験していればまだ違ったかもしれませんが、北側からは初めてだったため途中からルートが検討もつきませんでした。

地形の理解不足です。


今までの山行は登山道を歩けば山頂に着いたし、多少崩落などがあってもその場の状況を観察して先に進めました。

しかし今回初めて本当の壁にぶつかったと感じました。こういった壁を乗り越えられるかどうかは経験と事前の準備が欠かせないということ。

今回私にはそのどちらも不足していると実感出来たため撤退の判断になりました。

しかし悲観的なわけではなく、むしろ撤退せざるを得ない壁に出会えた事に楽しささえ感じている自分もいます。

自分は比較的器用な方で、だいたいなんでもソツなくこなす事が出来る。だけどだからこそ努力や準備を怠る事が多い。
しかし今回感じた壁は努力や準備無しには超える事が出来ないものだ。

明確な目標が見えたら、後はどうやってそこに到達するか。その過程はきっと自分にとっては苦しくても楽しいし、意味があるものになるはずだと思います。

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